公共事業はどこまで民間に任せられる?民間委託のメリット・デメリットを解説

人手不足や財政難、住民ニーズの多様化といった課題を抱える中、公共事業の効率化やコスト削減の手段として、自治体の窓口業務をはじめとする公共事業を民間事業者に委託するケースが増加傾向にあります。
しかし、「法的に問題はないのか」「本当にコスト削減につながるのか」「サービスの質は維持できるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。また、民間委託の導入を検討する際には、メリットはもちろんのこと、デメリットも正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、民間委託のメリット・デメリットを詳しく解説するとともに、委託可能な業務の種類や法的根拠、委託先企業を選定する際のポイントまで網羅的にご紹介します。導入を成功させるために押さえておくべき情報をぜひご確認ください。
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民間委託の導入を考えているが何から検討すべきか分からない
法的な整理や業務の切り分けについて基本から理解したい
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┗①コストの適正化と業務効率化による財政負担の軽減
┗②専門ノウハウの活用による住民サービス品質の向上
┗③職員がコア業務に集中できる環境を実現
┗①ガバナンスと責任所在の複雑化
┗②職員のノウハウ流出・人材育成機会の減少
・まとめ
民間委託とは?公共事業で委託されている業務
民間委託とは、国や地方公共団体などの行政機関が担う事業の一部を、民間事業者に任せる仕組みを指します。
近年は財政制約の強まりや人手不足を背景に、全国の行政機関で幅広く導入が進んでいます。
委託される公共事業は多岐にわたり、
・自治体窓口業務:住民票の写しや戸籍謄本の交付、各種届出の受付など
・インフラ関連:ごみの収集運搬、道路や橋梁の維持補修、上下水道の運転管理
・福祉分野:保育所や放課後児童クラブの運営、障がい者福祉サービス
・バックオフィス:公金債権の回収業務、総務・経理業務、
・コールセンター:問い合わせ対応・健診の受診勧奨
などの業務が挙げられます。
矢野経済研究所の調査(※)によると、2024年度の国内BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場規模が約5兆786億円に達し、前年度比で4%増加したとされていますが、その理由の一つとして、コロナ禍において新型コロナウイルス関連業務の受託を通じて営業接点が生まれた官公庁・自治体において、アウトソーシングへの機運が高まっていることがあげられています。
※出典:株式会社矢野経済研究所『BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年)』(2025年11月26日発表)
こうした市場動向を踏まえると、自治体領域におけるアウトソーシングのあり方も、今後さらに変化していくことが予想されます。
とりわけ、各自治体では改正地方自治法の経過措置が終了する2026年(令和8年)3月末に向けて、既存の委託契約の見直しや再設計が進められています。これは既存の民間企業と契約を更新する際に業務の切り分けや委託範囲そのものを再検討する動きにもつながっており、民間委託の在り方が見直される重要なタイミングとなっています。
人手不足やDX推進の流れも相まって、行政機関ではノンコア業務を中心に外部リソースを活用する動きが加速しており、今後民間委託の規模範囲は更に大きくなると考えられます。
民間委託が可能となる法的根拠
それではここから、そもそも公共事業を民間へ委託して法的に問題がないのか、という部分について解説します。
結論からお伝えすると、公共サービスの民間委託にあたっては、すべての業務を民間に任せられるわけではありません。その判断のポイントとなるのが、「公権力の行使」に該当するかどうかです。
公権力の行使とは、行政機関が法令に基づき、一方的に国民の権利や義務に影響を与える行為を指し、たとえば「許認可の付与・取消し」「行政処分」「課税」などがこれに該当します。こうした許認可や処分など、国民の権利義務に直接影響を与える「公権力の行使」に該当する部分については、原則として行政が自ら行うべきものとされています。
一方で、申請書の受付やデータ入力、書類作成の補助といった定型的・補助的な業務については、「地方自治法」や「公共サービス改革法」に基づき、民間委託が可能とされており、実務上も広く活用されています。
つまり、業務の性質ごとに「行政が担うべき部分」と「民間に委ねられる部分」を適切に切り分けることが、民間委託を進めるうえでの重要なポイントとなります。

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民間委託のメリット
公共事業の民間委託には、行政機関にとって多くのメリットがあります。ここでは、代表的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
①コストの適正化と業務効率化による財政負担の軽減
民間委託の活用により、人件費を中心としたコスト構造の適正化が図られます。
民間事業者は、業務の標準化や効率的な人員配置に関する知見を有しており、同等のサービス水準を維持しつつ、効率的な業務運営につながることが期待されます。また、AIやRPAなどのデジタル技術を活用した業務効率化により、処理時間の短縮や業務負荷の平準化を図ることができ、結果として持続可能な業務運営の実現につながると考えられます。
②専門ノウハウの活用による住民サービス品質の向上
民間事業者は、窓口対応やコールセンター運営などにおいて専門的なノウハウを蓄積しています。応対マニュアルや教育プログラムが整備されており、スタッフは体系的な研修を通じて高い接遇スキルを身につけています。こうした専門性を持つスタッフが対応することで、待ち時間の短縮や問い合わせ対応の迅速化が図ることができます。
③職員がコア業務に集中できる環境を実現
定型的な業務を民間事業者に委託することで、職員は政策立案や相談対応など、本来注力すべきコア業務に集中できるようになります。人的リソースを戦略的に再配置することで、組織全体の生産性向上が期待できます。職員の専門性を活かした業務に時間を割けるようになることは、行政サービス全体の質を底上げする効果があります。
このように、民間委託は「コスト面」「品質面」「組織運営面」のいずれにおいてもメリットをもたらします。適切に活用することで、限られた予算と人員の中でも質の高い公共事業を維持・向上させることが可能になります。
民間委託のデメリット
民間委託には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらの課題を十分に理解しておくことが重要です。
①ガバナンスと責任所在の複雑化
業務を外部に委ねることで、行政機関と民間事業者の間に複数の指揮命令系統が生じます。トラブル発生時に責任範囲が曖昧になりやすく、住民への説明責任も重くなる傾向があります。仕様書に盛り込めなかった業務や想定外のケースへの対応には、追加の調整コストが発生する可能性もあります。
②職員のノウハウ流出・人材育成機会の減少
長期間にわたって業務を外部に任せ続けると、職員が現場感覚や専門知識を蓄積する機会が減少します。その結果、契約見直しや新たなサービス設計を行う際に、適切な要件定義や価格交渉が困難になる恐れがあります。人材育成の観点からも、意識的にノウハウを内部に残す仕組みづくりが求められます。
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民間委託を成功させるためのポイント
委託先企業選定のポイント
民間委託の効果を最大化するためには、適切な委託先企業を選定することが不可欠です。ここでは、成功に導くための重要なポイントを解説します。
過去の実績と専門知識で信頼性を見極める
委託先企業を選定する際は、過去の案件実績を丁寧に確認することが重要です。
同様の業務を他の行政機関で受託した経験があるか、またどのような成果を上げてきたかといった点を踏まえて検討しましょう。あわせて、業務に必要な専門知識やスキルを持つ人材が十分に確保されているかも重要な確認ポイントです。さらに、個人情報や機密情報を適切に取り扱うためのセキュリティ体制が整備されているかも、委託先の信頼性を判断するうえで欠かせません。具体的には、プライバシーマークやISO27001(ISMS)などの第三者認証の取得状況や、情報管理に関する社内ルール・運用体制を確認するとよいでしょう。
契約内容と責任範囲を明確に定める
トラブルを未然に防ぐためには、契約段階で業務範囲や責任の所在を明確にしておくことが不可欠です。委託する業務の具体的な内容、期待する成果水準、報酬体系、納期などを詳細に定めましょう。特に、想定外の事態が発生した場合の対応ルールや、個人情報保護に関する取り決めは、委託先とともに慎重に検討しましょう。
定期的なモニタリングとフィードバック体制を構築する
契約締結後も、業務の遂行状況を定期的にモニタリングすることが成功の鍵です。定例会議を設けて進捗状況を共有し、課題があれば早期に改善策を講じましょう。KPIを設定して成果を可視化することで、客観的な評価が可能になります。継続的なフィードバックを通じて、委託先との信頼関係を構築していくことが重要です。
導入に向けてのポイント
最後に、実際に導入を進める際に押さえておきたい準備のポイントを整理します。
委託目的と対象業務を明確化する
民間委託を検討する際は、まず何のために委託するのかという目的を明確にしましょう。
コストの適正化なのか、サービス品質の向上なのか、職員の負担軽減なのかによって、委託すべき業務や選定基準が変わってきます。現状の業務を棚卸しし、どの業務が委託に適しているかを分析することが第一歩です。成果指標も事前に設定しておくと、導入後の効果測定がスムーズになります。
先進事例をもとに庁内で合意形成を図る
すでに民間委託を実施している行政機関の事例を収集し、成功要因や課題を学ぶことが有効です。内閣府や総務省が公開している事例集も参考になります。また、組織内の関係部署と情報を共有し、導入に向けた合意形成を図ることも欠かせません。現場の意見を取り入れながら検討を進めることで、スムーズな導入と運用が実現できます。
まとめ:民間委託のメリットを活かして行政サービスを向上させよう
民間委託は、行政サービスの効率化と品質向上を同時に実現する有力な選択肢として定着しつつあり、着実に広がりを見せています。コストの適正化や業務効率化、専門ノウハウの活用による住民サービスの品質向上など、多くのメリットをもたらす一方で、ガバナンスの複雑化やノウハウ流出といったデメリットも存在します。ただ、適切な委託先選定と継続的なモニタリングによって十分に対処可能と言えるでしょう。
民間委託を検討する際は、まず委託目的を明確にし、先進事例を参考にしながら組織内の合意形成を進めていきましょう。信頼できるパートナーとの連携により、行政サービスの向上と持続可能な運営体制の構築を目指していきましょう。
国和システムでは、様々な自治体窓口業務や、コロナ関連の事務局など多数の実績がございます。
専門のスタッフが常駐し、長年培ったノウハウを活かしながら窓口をはじめとした関連業務を包括的に運営することで、業務の効率化やサービスを向上させることが可能です。
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